想いを繋ぎ、価値を伝える為の学びは続きます
こんにちは。
(有)松葉製畳の2代目、松葉清幸です。
2月21,22日と畳表の産地、熊本県八代へ行って来ました。
数年前から八代へ通うようになったのですが、コロナ禍でなかなか行けない時期が続き、今回3年ぶりに訪れる事が出来ました。
畳といえば日本独自のそして【い草】を使った天然素材を連想されると思います。しかし今、その熊本産い草を使った国産畳表が激減のピンチに立たされているのです。畳全体の需要に占める割合の第1位約50%が中国産、そして第2位約30%が化学素材で作られた人工畳表、残りの僅か20%が国産畳表となっています。
何と日本固有、天然素材の代表格である畳は外国産と人工素材によって占められているのです。
現状を打開しなきゃいけない、高品質な国産畳表を残さないといけないとの思いを持った全国の畳職人が産地のい草農家さんを訪れて研修を受け、天然素材の国産畳表を学び消費者に伝えようという機運が高まってきています。
今回は私が発起人兼企画者として熊本産地研修を企画、新潟・宮城・埼玉・千葉・横浜・静岡から私を含めて7人の仲間が集まりました。
初日は天津さん・坂本さんの若手い草農家さん2軒を訪問し、意見交換を行いました。情熱を持ちい草作りをされる若い農家さんに刺激を受け、この様な若い農家さんが1人でも多くい草作りを継承して行ってくれることを願います。
2日目は畳屋さんならば知らない人はいない、あのテレビ番組の和風総本家にも出演された「い草農家」のレジェンド、橋口さんを訪れて畳表を織り上げる工程を体験させて頂きました。
一枚の畳表を織り上げる為に繊細で気の遠くなるような工程の連続が有ることを体験し、改めて畳表の価値を感じることが出来ました。
そして最後にコロナ禍以前に【い草の刈り取り作業体験】をさせて頂いた上本さんを訪ねて作業場見学と意見交換をさせて頂きました。上本さんは若手農家さんとレジェンド橋口さんの間の世代で私よりも少し歳下の方ですが、高い技術と飽くなき探究心をもってい草作り・畳表作りをされる素晴らしい農家さんです。レジェンドの次の世代で間違い無くい草作りを引っ張って行ってくれる農家さんだと思います。
残念ながらこの様に高い志を持って産地を訪れる畳職人はまだまだ少数派で全体の数%程度しかいません。
この地区でも私以外産地を訪ねた事が有る畳屋はいないでしょう。(研修では無く旅行でならあるかもしれませんが…)
日本全国、そしてこんな小さな地元でさえ国産畳表と外国産畳表の違いを語れない畳屋、産地を偽造して売る畳屋の噂話も聞こえて来ます。
「産地に行っても何も変わらないよ」
「どうせ遊びに行くんでしょ」
「刈り取り体験して農家にでもなるの」
同じ畳職人から実際にこんな残念な声を聞きました。
国産畳表に価値を感じない、分からない畳屋は価値を語らず価格しか語らないでしょう。それでは一般消費者の方に国産畳表の価値を伝える事など到底出来ません。この業界、国産畳表が残っていけるかどうかは畳屋の覚悟が1番だと思います。その為にも産地を見て肌で感じることが大切だと思います。
今回、この企画に賛同して参加された全国の畳職人さん、忙しい中貴重なお時間を割いて受け入れて下さったい草農家さん、本当にありがとうございました。
国産畳表が残っていける為には何をどうすべきか、い草農家さんの想いを、手間暇を掛けて作られた畳表の価値を一般消費者の方にどうしたら伝える事が出来るのか。
いつまでも学びは続きます。